2022 年 6 月 11 日(土)12日(日)にオンライン開催された日本NPO学会「第 24 回研究大会(武蔵大学)」の 公募パネルセッション(6月11日(土)10:55~12:35)にて、当センター理事の佐藤大吾と事務局の谷利亮が登壇いたしました。
今回のパネルセッションのテーマは「非営利組織に関する不祥事データベースから見る傾向と対策」です。JCNEが、昨年6月から収集した検索記事データをもとに集計、分析した調査報告をベースにして、4名のパネリストが、非営利組織の不祥事の傾向や防止策について、パネルディスカッションを行いました。
<調査報告(要約)>
非営利組織評価センターで、昨年6月から収集した検索記事データをもとに、不祥事件を集計、分析しました。この間のデータ84件を分類した上で、今回は、会計不正に関する事案26件の個別調査の結果から、次のような傾向を見出しました。
①個人型の 「横領・着服」の14件では、「経理を一人で担当」していたケースが、7件あった。
②組織型の「不正受給」の10件について、「虚偽の帳簿・報告」によるものが、7件あった。
また、分析結果から見えてきたものとして、次の3つをあげています。
1. これらの不正事例については、組織内部による月次確認(点検)や、年次で実施される監事監査で、その不整合が見つけられると思われるものが多い。
2. これらの会計不正事例の防止は、どのようなチェック体制を構築しているかが重要。
3. 不祥事発生時の迅速な対応が、ダメージを大きくしない要因となる。
【プレゼン資料】
https://jcne.or.jp/data/20220611JNRA_JCNEreport.pdf
<パネル討議でのコメント(抜粋)>
・不祥事の多くは株式会社と同様のケース。非営利組織ならではの問題を明らかにできると良い。
・不祥事は、英語ではスキャンダル。風評をどう抑えるかも大切な対応である。
・内部統制においては「ダブルチェックの励行。権限集中ではなく、権限をわけよ。」と言われるが、小さい組織ではどうすべきか?
→報告と事実を突き合わせる。2つの目ではなく、4つの目を持つこと。特にお金の流れのチェックが大切。
・社会福祉法人では新しく設立するとき税理士、会計士、弁護士が監事でないと認められない。ただし、現状では、2万団体のうち1-2割しか専門家が監事になっていない。
・公的データベースの必要性という社会的課題があり、それには相応のコストも必要。
・「性弱説」にたって考えることが大切。
・今後は、ハラスメントや人権問題、ジェンダー問題なども重要なテーマとなる。
なお、参加者からは、「このような課題・問題意識が共有できる場は貴重。」との声とあわせて、「今回のパネル発表の登壇者は男性のみで、違和感を持った。」というご意見もありました。
< 日本NPO学会第24回大会の概要>
第 24 回大会公式サイト https://janpora.org/meeting/
第 24 回大会プログラム https://janpora.org/meeting/pdf/prg24.pdf
一般パネル「非営利組織に関する不祥事データベースから見る傾向と対策」
2022年6月11日(土)10:55~12:35 オンライン
【パネリスト】
岡本 仁宏氏 関西学院大学法学部・大学院法学研究科教授(政治哲学・NPO研究)、
川崎 清廣氏 税理士・ITコーディネータ/特定非営利活動法人NPOながさき代表理事
関口 宏聡氏 特定非営利活動法人セイエン代表理事
田中 伸英氏 弁護士・公認不正検査士/プロアクト法律事務所
【モデレーター】
佐藤 大吾
一般財団法人非営利組織評価センター理事、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部教授、
一般財団法人あしなが育英会理事
【研究発表者】
谷利 亮
一般財団法人非営利組織評価センター事務局