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2022年4月5日

【JCNEコラムVol.7】未完のプロジェクト 日本のNPO (一財)社会的認証開発推進機構(AAC)理事長 吉田 忠彦(JCNE理事)

未完のプロジェクト 日本のNPO

日本で「NPO」と言う場合、それは必ずしもNonprofit Organization全体を指しているとは限らない。むしろ公益法人や社会福祉法人などの税法上の公益法人等は含まないことが普通である。これは日本の特殊事情によるものであり、また歴史的には経過的な特徴として後の時代になって記憶されるのかもしれない。

そもそも主務官庁の裁量による許認可で法人格が与えられるという公益法人等の制度の建付けが、およそ市民社会のあり方にはそぐわないということから、準則主義による新たな制度作りが目指され、その結果として特定非営利活動促進法が成立したのである。

従来の公益法人等の制度は、主務官庁による法人の許認可だけでなく、法人設立後の指導・監督にも及んでおり、そうした官主導のコントロール、事前のフィルタリングが、その制度の建付け特徴になっていた。それに対して、準則主義によって最低限の条件をクリアすることで法人格それ自体は比較的簡単に取得することができ、その後に別の制度や、あるいは市民の支持にもとづいた寄付等によってその法人の存続が決まるという仕組み作りが、特定非営利活動促進法の特徴になっている。いわばこれは従来の官のコントロールによる事前のフィルタリングから、市民による自発的で柔軟な活動を許容し、その後にその組織の存立・存続が決まるという事後的コントロールの建付けへ転回だったのである。

それは官主導の社会から市民主導の社会への転回を基礎づける革命といってもよいものだった。これが「日本のNPO」の目指したプロジェクトだったのである。しかし、このプロジェクトが完成するためには、単に法人格が簡単に取れるという法人制度だけでは充分ではない。むしろ重要なのは、その後の、つまり法人格が取得されて、多くのNPOが発生した後の、市民によるそれらのコントロールあるいはフィルタリングが機能していることなのである。

しかし、残念ながらまだこの市民自身による事後的なコントロールやフィルタリングは、制度としても、あるいは人びとの意識としても十分なものとはなっていない。官による指導・監督ではなく、市民が自発的に立ち上げた事業やその受け皿となる組織が、市民の手によって支えられ、市民の手によって評価される仕組みを築くこと、これこそがわれわれ非営利組織評価センターのミッションなのである。
【 (一財)社会的認証開発推進機構(AAC)理事長 吉田 忠彦(JCNE理事)】

 

プロフィール

(一財)社会的認証開発推進機構(AAC)理事長
現在、近畿大学経営学部教授、京都大学公共政策大学院非常勤講師、(公社)非営利法人研究学会副会長などを務める。大阪府公益認定等委員会初代委員、日本経営診断学会副会長なども務めた。著書に『非営利組織論』(田尾雅夫との共著、有斐閣)、『地域とNPOのマネジメント』(編著、晃洋書房)などがある。

 

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