非営利組織評価センター(JCNE)の設立時からロールモデルとして参考にしている米国の評価機関BBB Wise Giving Alliance(BBB Wise)の協力のもと、寄付者動向をテーマにしたオンラインセミナーを開催しました。本セミナーはグッドガバナンス認証団体やJCNE関係者による招待制の勉強会として実施したものです。その内容は日本の非営利セクター関係者にとっても大いに参考になる、示唆に富んだものでしたので、より多くの方々の参考になるように、発表内容やプレゼン資料をまとめて公開いたします。
今回のセミナーは、2021年6月にオンラインで開催されたInternational Committee on Fundraising Organizations(ファンドレイジング組織に関する国際委員会 通称:ICFO)の年次総会で発表されたBBB WiseのプレゼンテーションをJCNE関係者が聞いたことがきっかけとなりました。プレゼン内容は、BBB Wiseが毎年発行している北米における寄付に関する調査レポート「Donor Trust Special Report」の2021年版をもとしたものです。テーマは『Charity Impact』で、チャリティ(民間公益団体)のもたらすインパクトについて、米国・カナダの一般人を対象にしたアンケート調査結果です。
チャリティのもたらすインパクトについて、確立した定義はなく、人によって理解が異なります。たとえば、①受益した人の数、②受益者の満足度、③量的大小、④需要に対する達成率などが挙げられます。BBB Wiseの調査では、チャリティインパクトの視点から、一般人が寄付する際に考慮する重要なポイントについてアンケート調査を実施しました。調査レポートでは、寄付者がチャリティのもたらすインパクトをどのように認識しているか、寄付の決定においてどれほど重要であるかについて、詳しく説明しています。
・インパクトということ自体が何を指すのかわからない人が47%いた。
・寄付する際の重要な基準は①信頼度、②インパクト、③財政状況という順番。 ・寄付者は、事業の短期的なインパクトと量に関心を持っているが、長期的なインパクトとその質をより重要視している。 |
調査レポートをもとにしたプレゼンは、日本においても非常に参考になる内容だと考え、BBB Wiseの代表のアート・テイラー氏にお願いし、開催することになったものです。テイラー氏は日本財団の招聘で2016年に来日したことがあり、その際にはJCNE主催の非営利組織の組織評価に関するセミナーにご登壇いただいたこともある方です。
2021年9月に、JCNEでは、BBB Wiseの協力のもと、この特別レポートの内容を紹介するセミナーを開催することになりました。当日は、アメリカと日本をオンラインでつないで、BBB Wiseのアート・テイラー氏と、調査レポートを担当された エルビア・カストロ氏から逐次通訳を入れて直接解説していただきました。また、組織評価の意義や課題について、テイラー氏とJCNE太田理事長のダイアローグも行いました。
【BBB Wiseのプレゼンテーション】
仮訳日本語付き原資料)2021 Give.org Donor Trust Special Report: Charity Impact
https://jcne.or.jp/data/2021BBBWise_DonorTrustSpecialReportCharityImpact.pdf
【開催レポート】
BBB Wise &JCNE特別セミナー『Charity Impact:チャリティのもたらすインパクト』
https://jcne.or.jp/data/202109_jcne_seminar_report.pdf
BBB Wise Giving Alliance&非営利組織評価センター(JCNE)特別セミナー
『Charity Impact:チャリティのもたらすインパクト』
日時:2021年9月15日(水)9:00~11:00
方法:Zoom(逐次通訳あり)
参加者:55名
主催:(一財)非営利組織評価センター
特別協力:BBB Wise Giving Alliance
助成:(公財)日本財団
<スケジュール>
9:00 オープニング ご挨拶
・BBB Wise Giving Alliance アート・テイラー氏
・非営利組織評価センター 太田理事長
9:10 調査レポート「Charity Impact」の報告
・BBB Wise Giving Alliance エルビア・カストロ氏
10:00 休憩
10:10 Q&A time
10:40 ダイアローグ(アート・テイラー氏と太田理事長)
・組織評価の意義と課題
11:00 終了
<BBB Wise Giving Allianceについて>
BBB Wise Giving Allianceとは、老舗的な第三者機関として知られていた National Charities Information Bureau(NCIB)と Better Business Bureau(BBB) の合併によって 2001年に設立した米国の大手非営利組織評価機関である。4 分野 20基準からなる評価基準で、全米の非営利組織を評価している。評価基準を満たした団体は認証シールを任意でライセンス契約することにより、信用性をドナーに提示することができる。
https://www.give.org/
<Donor Trust Special Report:Charity Impact>
この調査レポートは、米国全体で2,100人の成人、カナダで1,000人以上の成人を対象としたオンライン調査に基づいています。「チャリティのもたらすインパクト」という用語の定義について、調査結果からは世代間の大きな違いがありました。たとえば、Z世代は「チャリティのもたらすインパクト」を「定義された目標を達成する組織」と考える確率が最も高いです。ミレニアル世代は「組織の費用対効果」(27%)を、ミドル世代は「プログラムの質」(26%)を最も重視する調査結果が出ました。世代間の言語の違いが予想されますが、民間公益団体は、アピールやその他のコミュニケーションで使用される一般的な用語を、さまざまな潜在的な解釈に適応させる必要があることを示唆しています。
https://www.give.org/give.org-donor-trust-report#
<登壇者プロフィール>
アート・テイラー(Art Taylor)氏
BBB Wise Giving Alliance President & Chief Executive Officer
フランクリンマーシャルカレッジ卒業。その後テンプル大学でジェームズ・E ビーズリー校で JD を取得。2002 年には法律の名誉博士の称号を受ける。その他のキャリアとして、米国最大の NPO 中間支援組織 Independent Sector 理事、キーストーン株式会社、UGI 株式会社、デトロイト&トウシュ LLP にて公認会計士として活躍などの経歴を持つ。
エルビア・カストロ(Elvia Castro)氏
BBB Wise Giving Alliance Manager, Regional Charity Reporting
太田 達男
(一財)非営利組織評価センター 理事長
信託銀行役職員を歴任、44年間の信託マンとしての経歴に終止符を打ち、2000年4月より財団法人公益法人協会理事長、現会長。公益法人制度改革では、2000年法制審議会民法部会の法人制度分科会を皮切りに、公益法人制度の抜本改革に関する懇談会委員や民間法制・税制調査会座長代理として、終始市民社会の立場から提言活動を行う。
他に、(公財)公益法人協会 前理事長 現会長、(公財)成年後見センター・リーガルサポート 理事、(公財)日本フィランソロピー協会 理事、(公財)渋沢栄一記念財団 監事、(公社)日本アイソトープ協会 監事等。