先ずはノンフィクションとして共有
「現場に未知の“第三の男”がいたことをつきとめる」これは、第二次世界大戦中のウィーンを舞台に制作されたミステリー映画不朽の名作「第三の男(The Third Man)」の下りである。
「第三の」とは、未知なるものや正体が明らかでないもの、第一・第二の特性にないそれ以外のもの、また、イギリスの社会学者ギデンズが提唱した「第三の道」のように拮抗する2つのテーゼに対する代替案(打開策)として位置づけられることもある。「第三のビール」はビールや発泡酒とも違う税法規格の外側を狙った知略の製品であるといえよう。
さて、われわれが活動する第三セクターは第一・第二セクターと対比したNotセクターとして説明されることが多い。しかし、この第三(Not)セクターの固有性や特性(レゾンデートル)を正当に理解し、その意義を説明できる人はそう多くない。
最近では、第三セクターで活躍するNPOや市民活動団体が映画やドラマ題材として扱われているケースもよく見かけるようになった。貧困や高齢社会に対する問題を扱った社会派のものもあるが、中にはNPO法人が詐欺など、犯罪の隠れ蓑のように扱われているものもある。2021年公開の映画「ザ・ファブル2」では、NPO法人が殺し屋の表の顔として描かれている。もちろんNPOだからとすべてが清廉潔白なわけではなく、題材の扱いとして表現の自由を逸脱するものとまでは言えない。また、人気のテレビドラマシリーズ「相棒」でたびたび登場するNPO等の設定も、制作側はよくその実態を把握した上で描いているものと感心すること多々である。
「刑事」「医師」「弁護士」を題材としたドラマも最近ではフィクションを前提にノンフィクションなパーツを随所に埋め込むことで、よりリアリティを感じさせるように構成されており、その曖昧な境界線を楽しむことを醍醐味としているかのように感じる。映画にもなった人気ドラマ「あぶない刑事(デカ)」は完全なフィクションとして成立しており、こんな刑事がいるとは誰も思ってはいない。
しかし、未だその知名度が低い第三セクターやNPOの活動が、詐欺集団の隠れ蓑や殺し屋の表の顔などとして影響力のある映像メディアで扱われ、大衆の中で怪しいイメージだけが独り歩きすることを危惧しないわけでもない。先ずはその存在や活動のノンフィクションを社会と共有しないと、フィクションとの区別・判断ができないのではないだろうか。
【(特活)きょうと NPO センター 常務理事・統括責任者 平尾 剛之(JCNE理事)】
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