非営利組織評価センターでは、一般法人(一般社団法人、一般財団法人)を対象にしたアンケート結果をとりまとめた調査報告書を2021年8月に発行しました。この発行を記念して、8月18日にアンケート調査から見えてきた一般法人の組織運営について解説するセミナーを開催いたしました。
そもそもの調査は、NPO法人や公益法人に比べて、その経営実態がわからないと言われている一般法人について、組織、事業、財務等の法人情報を把握するために行ったものです。
当センターは非営利組織の組織評価機関として、一般法人を含む法人格のある非営利組織を対象に組織評価・認証事業を実施しています。非営利組織の中でも、その数が年々増加していている一般法人について詳しい統計データがないことから、一般法人の実態を探るために2021年1月から2月にかけて、アンケート調査を実施しました。この調査は、当センターのネットワーク等を通じて実施したもので、約7万団体ある一般法人のうち、回答団体数154団体とごく限られた母数のアンケート調査となっていますが、一般法人の経営実態の一部を垣間見ることができる調査報告書となっています。
今回実施したセミナーでは、調査報告書の中から、一般法人の組織運営の状況について気になる箇所をピックアップし、当センターの組織評価基準によるガバナンスの目指すべき姿と比較しながら、解説を行いました。
一般法人の関係者であれば自団体の組織運営の参考資料として、非営利組織の支援者であれば非営利組織の状況を確認するためのデータとして活用していただける内容です。当日使用したプレゼン資料もあわせて掲載しています。ぜひ、ご活用ください。
調査報告書発行記念セミナー
「アンケート調査から見えてきた一般法人の組織運営」
日 時:2021年8月18日(水)10:00~11:00)
場 所:Zoom(オンライン)
対 象:一般法人の組織運営にご興味がある方ならどなたでも
参加者:21名
助 成:(公財)日本財団
前半は、当センター業務執行理事の山田泰久より話題提供として、調査報告書の内容を紹介しました。
①アンケート調査から見えてきた一般法人の組織運営
②JCNE組織評価に基づく一般法人のガバナンス
プレゼン資料「一般法人に関するアンケート調査報告書から見えてきたこと Ver.02」
※セミナー当日に使用した資料を一部改訂しています。
<アンケート調査報告書の概要>
・一般社団法人140団体、一般財団法人14団体、計154団体によるアンケート回答をもとに作成。
・回答法人について、税制上の区分は、非営利型108団体(70%)、普通法人型29団体(19%)、不明17団体(11%)。
・法人経営の困りごととして回答があった選択肢(複数回答あり)の上位3つ。
①事業を行うための資金が十分ではない。あるいは、安定していない。 98団体(64%)
②事業を行うための人材が不足している。69団体(45%)
③外部からの支援の機会を十分に得られていない。42団体(27%)
・雇用者数について、「誰も雇用していない」42団体(27%)、「1~3人」38団体(25%)、「4~10人」39団体(25%)、「11人以上」35団体(23%)。
・理事会を設置している法人は、134団体(87%)。
・財務諸表をホームページで公開している団体は、45団体(29%)。
<アンケートから見えるガバナンスの課題>
ガバナンスの課題
1.解散をしなければならないケース
・社員0人の法人がある
2.法令違反となっているケース
・社員総会を開催していない法人がいる
・理事会設置型法人に求められる条件
3.税法上の非営利型法人の要件を満たしていないケース
・非営利型法人の理事の人数の条件
<一般法人のガバナンス診断>
【一般法人の現況】
・NPO法人のように所轄庁など相談できる窓口がほとんどない。最近は、地域のNPOセンターでも相談できるが、NPO法人ほど一般法人について詳しいわけではない。
・一般法人の設立に関する情報は入手しやすいが、設立後のガバナンスに関する情報はまとまったものが少ない。
・NPO法人のように毎年所轄庁に提出する書類がないので、ガバナンスの状況を確認する機会がない。
・現在行っているガバナンスの状況が正しく行われているのかをチェックする機会がない。
【対策案】
JCNEが実施している「ベーシックガバナンスチェック」を法人のガバナンスの健康診断として活用する。
後半は、Zoomのブレイクアウトルームを使って、参加者のみなさんでグループディスカッションを行い、最後に全体で感想の共有などを行いました。
参加者の方からは、今回の調査で一般法人のガバナンスに対する意識や実態が見えてきてとても意義があるものだった、法令の条件をクリアできる運営ができていないと思われる法人が一定数いることに驚いたなどの感想をいただきました。
また、「一般法人は、公益法人改革の時の移行法人から家族で社員2名理事1名の小規模法人までピンキリである」「例えば、助成金審査の際、NPO法人のように情報公開されていないので、一般法人は調査コストがよりかかる」「社会的にみても、一般法人の信用度がわかりにくいことはコストとなっている」などの意見もいただきました。
一般法人のガバナンスについては、当センターとしても引き続き、情報提供や調査研究を行っていく予定です。また、一般法人を対象にした組織評価・認証制度の普及に引き続き取り組み、ガバナンスの推進に貢献していきます。
◎ご参考:当センターの組織評価・認証制度
非営利組織は市民からの信頼が基礎となって成り立つ組織です。立派な公益的事業を展開していても、運営がずさんでは、組織内外から確かな信頼を得ることはできません。
非営利組織評価センター(JCNE)では、「グッドガバナンス認証」と「ベーシックガバナンスチェックリスト」という2種類の評価情報を公開しています。
非営利組織を支援したいと考えている市民、企業、助成財団、行政等のみなさまが、信頼できる非営利組織を探したり、応援したい団体が信頼できる団体かどうかを確認する時に役立つ情報を発信しています。
【グッドガバナンス認証】
JCNEの独自の評価基準に基づき、専門の評価員が団体を訪問し、ヒアリングや書類確認によって組織運営の状況を評価しています。その評価結果をもとに、非営利組織の中でも組織運営やガバナンスが一定水準以上のレベルの団体を認証しています。グッドガバナンス認証団体は外からは見えにくい組織内部の状況を第三者機関に開示して、信頼性・透明性の向上に努めている団体です。また、課題がある場合も見直し、改善をしていく姿勢や意欲のある団体でもあります。寄付をしたい、ボランティアとして参加したいという市民や企業の方が、期待をかけて支援ができる団体として紹介しているのが「グッドガバナンス認証団体」です。
https://jcne.or.jp/evaluation/good_governance/
【ベーシックガバナンスチェックリスト】
JCNEの独自の評価基準に基づき、団体運営の基本についてセルフチェックと提出書類をもとに簡易的に評価をしています。評価結果は「ベーシックガバナンスチェックリスト」で公開され、随時更新されます。継続的に第三者評価を受け、情報開示に積極的な透明性の高い団体として、JCNEは掲載団体への支援を推奨しています。
https://jcne.or.jp/evaluation/outline/