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2021年9月7日

【JCNEコラムVol.1】一般社団・財団:この融通無碍なるもの((一財)非営利組織評価センター 理事長 太田 達男)

一般社団・財団:この融通無碍なるもの

一般社団・財団法人の数が7万を超えた。この法人法が制定された13年前、私は非営利法人法制として果たして妥当なものかどうか、大きな疑念を抱いた。

理由は二つ。一つはこの法律には目的規定がなく、事業として法令・公序良俗に反しない限りどのような事業でも行えるため、社団・財団の名称を悪用し悪徳商法を営む法人などが出現する可能性、二つ目は法人財産に対する社員等関係者の分配請求権をあらかじめ規定することはできないものの、解散時の社員総会等の決議により実質分配が可能となるため、毎事業年度の利益配当は禁じられてはいるが、実質的に特定関係者へ利益を蓄積し、分配が可能となる点で、果たして非営利法人法制と考えられるのかというものであった。

もちろん、他の非営利法人法制と異なり、準則主義により手軽に法人を設立できること、監督官庁の行政指導といったものがないことは大いに歓迎すべき事柄であった。

13年経った現在、果たして私の懸念は杞憂に過ぎなかったかどうかだが、実はこれを確かめるすべがない。なぜなら主務官庁がないため、実態に関する統計が全く存在しないからである。法人の目的事業が不特定多数の利益を増進する公益的なものか、特定構成員の利益を図る共益的なものか、特定個人・家族など私人の利益維持が目的なのか、皆目知るすべがないのである。まして、その機関設計や情報開示を含むガバナンスの実態については、全く闇の中といってよい。

さは、さりながら私たちの目には多くの公益的な法人の存在が確認できている。7万のうち何割りぐらいかは全く分からないが、公益法人や特定非営利法人など同様、立派な民間公益活動を続けている一般法人も多いことは確実である。

一般法人専門の中間支援団体が存在しないため多くの公益型一般法人は、いわば手探りで事業と組織運営を続けている。

私たち非営利組織評価センターは、今回一般法人の実態を探るためアンケートを実施、その報告書をホームページで公開している(https://jcne.or.jp/2021/08/02/report-7/)。

もちろん、さらにその結果の精度を高める必要もあるが、私たちは組織評価事業を通じて、社会の信頼を得るに値する、融通無碍な制度を生かしつつ民間公益活動に従事する一般法人を数多く見出すことと同時に、その運営の良きパートナーとしてもお役に立ちたいと思っている。

【(一財)非営利組織評価センター 理事長 太田 達男】

 

 

プロフィール

(公財)公益法人協会 前理事長 現会長
その他多数の理事、監事を務める
主な著書『非営利法人設立・運営ガイドブック―社会貢献を志す人たちへ』
公益法人制度改革では、2000年法制審議会民法部会の法人制度分科会を皮切りに、
公益法人制度の抜本改革に関する懇談会委員や民間法制・税制調査会座長代理として、終始市民社会の立場から提言活動を行う。